奥のほうで、タンスの開け閉めの音や、お姉さんの鼻歌が聞こえる。

正直苦手なタイプ。


勢いで店に入ったけれど、お金なんて持っていない。

このまま店にいるのも気まずい。


このまま帰ってしまおうか。


お姉さんはまだ戻ってこない様子。


少しずつ足を後ろに引いていく。


――と、何か足の裏に……


「ふぎぃいいいいいいいいい!」

「きゃーっ! 何っ!」

私の足の裏から、先ほどの毛がすごい速さでお姉さんのほうに走り去った。

「あらら、どうしたの?」

お姉さんが、右手にタオル左脇にもタオル……にくるまれた毛を抱えて、店内に戻ってきてしまった。