泥だらけ毛の塊は、ぴたっと扉の前で止まった。

か細い棒が4本。多分これは足。動物だ。

「このお店に入るの?」

謎の動物は私の声に反応することなく、隙間に鼻を入れて器用に扉を開けた。

「う、うそ、ちょ――」

手馴れた様子でさっさと店内に入る毛を見て、私は、我を忘れて後を追った。



「うっ――」


一度声を飲み込んで――


「……わああああああああっ……」


店内に入った瞬間。

甘い香りがふんわり私を包み込む。

しかも、かわいくってキラキラなものがぐるっと取り囲んでお出迎え。

心がきゅううっと熱くなる。

背中から羽が生えてきて、ふわふわわーんと綿のように飛んでいってしまいそう。

ふわん、ふわん、ふわああああ――


「いらっしゃい」


「ひぎぃぃぃぃ!」


目の前に急に人の顔が現れて、私は人間が出す音ではないような悲鳴を上げた。