「はい、どうぞ」


やはり副店長さんに似合わない、可愛らしい花柄のティーカップが私の前に置かれた。

惹きつけられるようにカップを手に取り、口元に近づけた。


「いい香り」


爽やかなレモンの香りが私の鼻をくすぐる。

その香りを楽しみながら口に少し含む。

レモンの酸味を私の舌は待ち構えていたが、予想に反して甘さが口いっぱいに広がった。

「美味しい」

本当に美味しいときは、考えるより先に自然と言葉が出てしまう。

「良かった! これね、私んちで今朝摘み取ったばかりのハーブ」

「えっ! お茶って、家で作れるんですか?」

「そそ、ハーブはね。今飲んでいるのはレモンバーム。えっと、あっちの棚にあるのは乾燥しているものだけど、ペパーミントってハーブ。その隣はローズマリー、ラベンダー」

副店長さんは、木の棚に整頓されたガラス瓶を順に指差して、聞いたことあるような、ないような名前を口に出した。

「もしかしてこのお店ってハーブ専門店?」