ふと顔を上げた先。

もうだいぶ低い位置で小さくなる太陽が、雲の隙間に薄く見えた。



(あの雲……前にあおと食べたパンケーキみたい…)




街中の喧騒から離れた住宅街。

千鶴と、その足元にある細長い影だけが歩く。


(静かなの…苦手…にゃ…)


千鶴は、立ち止まり、すっと深呼吸した。


音のなかった狭い路地に、小さな千鶴の鼻声が響いた。