俺様天使とのキスまであと指輪一個分。

千鶴がすぐ側の男に話しかけるが、顔色一つ変えてはくれない。

「……っとお、無視してんじゃにゃい!」

カチンときた千鶴が男の腕を掴んで、思い切り歯を立てて噛んだ。

「――っ、このアマ!」

噛まれた男が千鶴を振り払い、千鶴の頬を思い切り引っぱたいた。

千鶴はか細い悲鳴を上げて床に叩きつけられ、衝撃で体を反転させ倒れ込んだ。

「ちづっ!」

「お前たちもおとなしくしていないと痛い目見るぞ」

男が鼻で笑うと、蒼はぎっと睨みつけた。

「や、やめて…蒼…」

腫れた頬を手で覆いながら、千鶴が蒼のそばにふらりと近寄った。