俺様天使とのキスまであと指輪一個分。

アンはすらすらと答える。

「じゃあ、アンちゃんが一人でこの家に住んでいるの?」

「五つ上のお兄ちゃんがいたんだけど、国政との戦いに出たきり帰ってこないの。ここの村の男たちはみんな戦いに出てしまったわ」

この歳ならまだオママゴトで使うエプロンなのに、アンのものは汚れて妙にリアルだった。

そんなエプロンをパタパタと手遊びしながら、奥のキッチンへと戻っていった。


「あんな小さな子が一人で暮らしているなんて」

「スープだってなけなしの材料で作っているんじゃない? 私たちがいただくわけにいかないよ」

「ええーっ、私腹ペコで死にそうにゃあ」


キッチンのほうではお皿を取り分けている音がしていた。