俺様天使とのキスまであと指輪一個分。

質素ではあるが、少ない食器や椅子は整頓されていた。

明らかに人の住む家に、蒼たちは勝手にあがりこんでいるだけだった。


「あ…キッチンのほうで美味しそうな匂いがしたにゃ…」

千鶴の目的は、空腹を満たすことだった。

「今ね、アン特製のキャロットスープを作っていたところなの。お姉ちゃんたちお腹すいてるの?」

「うん! すっごく!」

千鶴は大げさにお腹をさすってみせた。


「勝手にお邪魔してゴメンね。少しの間休ませてほしくって…あの…パパやママはいるかしら?」

美津子がアンの視線に合わせてしゃがみこんで、優しく問う。

「パパはアンが産まれる前からいなくって。ママは病気で死んじゃったの」