すっと構えたナイフは一直線に蒼の心臓を狙っている。

しかし蒼は、動かずに視線からフレンを外さない。


「どうして…どうしてあおは逃げないの?」


「……あおは…きっと……フレンって人を信じてる……だから…ホント…あの子ったら」


美津子は諦めの表情でふっと苦笑いを浮かべた。

ただ見守るしかできない千鶴は、悔しさで目に涙を貯める。


目の前にいる自分より一回り小柄の少女が、揺るぎない自信に満ちた眼をしている。


その眼に惹きつけられるように、フレンの眼も、次第に光を取り戻す。


「あおい……」