蒼が叫んで、美津子の手を振りほどいた。


「あお…?」

「迷惑なの! もういい加減にしてよ!!」


顔面蒼白になった千鶴に追い討ちをかけるように、蒼が怒鳴りつけた。



そのまま立ち尽くす二人の横を、蒼はゆっくりと歩き出す。


肩がすれ違うとき、何かが壊れた気がした。



目の前はもう蒼の家だ。

二人はきっとこの雨の中、傘をさして蒼を待っていたのだろう。