蒼はフレンに背中を向けると、音もなく浮き上がった。
振り返ることなく灰色の雲へと飛んでいく蒼を、フレンは一度も視線を逸らさず追った。
「俺は一体…何をしてるんだ?」
フレンの独り言は、雨の音に紛れて消えた。
「こんなところにまで逃げてきたんだな…」
模型のような線路や道路を辿って、視線の彼方に見慣れた街並みが確認できた。
地上は傘の花が色とりどりに咲き誇っていた。
「またあの森まで飛んでいこう…あそこなら誰にも見られない」
両手で風をかき分けて、前に進む。
濡れた制服に重さが加わって、いつものようにうまくいかない。


