「ただいまーっ」



ガチャッとドアを開ける。


「お帰りなさいませ、お嬢様。」



広い玄関には久我山が立っていた。



……前までは山田が言ってくれてたんだ…



「…あ、うん…」




「お嬢様、今夜はパーティーがございます。お父様の代わりに出席してもらいたい…との事です。」



―…お父さんは私をただの“役に立つもの”としか見てないの…?



でも、私はワガママ言っちゃダメな事は分かってる。


私がちょっと我慢すればいい事だもの…



「…分かった。行くわ。」



「かしこまりました。…パーティー用のドレスは私が用意しておきました。」



「え…うん、すぐに着替える。」



そう言って渡してくれたドレスを自分の部屋へ行って着替える。



ドレスは淡いピンク色で、肩の空いていて膝ぐらいまである。


胸より下には大きいリボンが真ん中についている。


少しフリルがついていて可愛い。



…これ、久我山が私のために選んでくれたんだ…。



「久我山ぁ、着替え終わったわよ。」



部屋のドアを開け、久我山を呼ぶ。



「お嬢様、凄くお似合いですよ。」


久我山は私を見て褒めてくれた。



「やっぱり、そのドレスで良かったですね。」



「…久我山が選んでくれたの…?」



「当たり前です。他に誰が?」



「…うん。ありがとう、久我山。」



…凄く嬉しかった。だって、前までは自分で選んでいたから。



…人に選んでもらうってこんなに嬉しいんだね。



「…久我山、私人に選んでもらったの無いから凄く嬉しいよ…」



「え…?山田さんの時は?」


「…自分で選んでた。」



「そう…でしたか。そんなに喜んでいただけて、私も嬉しいです…」



久我山は目を細くして笑う。