「今更、気付くなんてダメだなぁ…私は…」
どれだけ涙を零しても。
いくら私が想ったとしても。
――――あなたに届くことはもう、無い。
あなたの傍に居ることは、もうない。
私からあなたの手を離したのだから。
「…樹里様」
「…金光さん、ごめんなさい。
私、もう学校に向かわないと…」
もう私は、金光さんの顔を見れなかった。
見ちゃうと、頼みそうで。
―――怖かったから。
…『皇と、会わせて』と。
今の私なら、頼みかねなかったから。
そんなことしたら、皇に怒られる。
皇はそんなこと、許さない。
そんなこと、わかってるから。
だから。
私はまたも逃げる。
私は逃げるということしかできないから。


