すると奥側には、


『お久しぶりです、匡仙様』



匡仙様の姿。

私は頭を下げながら挨拶する。



『暫くぶりだな、成瀬の娘』



“成瀬の娘”

そう呼ばれるのは、初めてじゃない。


代名詞で呼ばれるのは、嫌だった。


特に、
好きな人のお父様に言われるのは、

―――――認めていないと言われているようで。



『…そうですね』

『…私が言いたいことは、分かっているのだろう』

『ご存知であろうと言うことは、私も薄々感じてはいました』

『…奴は気付いていないようだったが』