「はい、とても大切な」 ≪…会長は―――『誰だ』あっ、会長…≫ 電話口の奥からそんな声が聞こえた。 ああ、この声は。 ―――匡仙さんだ。 ≪『誰だと聞いている』…成瀬 樹里様です。『…代われ』≫ よかった。 もし切られたら、どうしようかと思っていたから。 「…昨日ぶりですが、お久しぶりです、匡仙様。 昨日は大変失礼なことをしたこと、お詫びします」 ≪ああ、…で、何の用だ≫ 『高柳の引き抜きに応じる、ということか?』と匡仙さんは言う。