高柳、帝――――。 この名前に聞き覚えがないわけはなかった。 だって彼の、弟だから――――。 副社長。 そんな位置にもう居たんだ。 …あの頃から彼が脅威した、彼の血のつながった弟。 そんな名前を、私は忘れるわけがなかった。 私はあくまでも自然に普通にしようと心掛けて、 「…成瀬 樹里です。いつも弟がお世話になっています。そして藤代さんにも…」 お世話になっています、と言おうとしたら。 「成瀬、樹里…?」 彼の目が、見開かれた。