「よかった。このご時世だったから、どうなることやらって心配してたんだ」

「まぁな。同じ大学の奴らなんかでも、苦労してたぜ。
ま、大概の奴らが最後の最後まで、ってことはなかったんだろうけど。
ウチの大学は日本で一番就職率が高いからな。
俺が入れたのも、…皇さんのおかげだしな」

「皇の…?」

「あぁ。俺の論文に惹かれたらしくてな」

「…論文、ね」

「論文って軽く言うけどな、すごいんだぜ?
文科省大臣賞とったんだからよ」

「それはすごい。
ところで…仕事には慣れた?」

「いーや、まだ。
入社してまだ間もないほうだからな、暫くは先輩の足を引っ張る感じだ」




苦笑いしながら言う、竜也。




「そうやって皆出世していくんだから、今のうちは先輩に迷惑かけときなよ?
私もそうだったからね」

「え、あの無駄に容量よかった姉貴が?!」

「無駄にって…。
うん、そりゃ、勿論よ。
誰だって初めからできる人なんていないもの」