そして、私たちはどこへ向かうかもわからない電車に飛び乗った。

これから始まろうとしている非日常に、思わず心が弾む。

移り変わって行く景色と共に、私の心の中の嫌なものが流れて行く気がした。

『     藤内家の皆さんへ

  さよなら。

              皐月 』

一応家においてきた置き手紙を思い出す。

そう、さよならだ。

嫌なことから、そしてこのうんざりするような現実から。

いつかはきっと、帰らなければいけなくなる日がくるのは、分かっていた。

それでも、今は、何も考えずにいたかったんだ。