美しいあの人

祐治はその美しい顔で、美しいのかどうなのかよくわからない話を始めた。
その人は、芙美子さんというのだそうだ。
祐治が前に働いていた会社の後輩。
年は祐治より三つ下の二十七歳。
仕事もできてなかなか頭も良くて、なおかつ綺麗な女性。
正直それを聞いただけで、あたしはかちんときていた。
だってどう考えても頭のいい美人OLなんてあたしよりもレベルが高いと思う。
しかし文句は言わずに黙って聞いておくことにした。
祐治としては、話のわかる良いお友達として食事をしたりしていたそうなのだが、
芙美子さんは祐治のことが好きだった。
芙美子さんは辛抱強く祐治に対して好意を示したけれど、
祐治はそれにはっきりした返事をしなかった。
業を煮やした芙美子さんは、つきあうのかそうでないのかはっきりしろと祐治に迫り、
祐治はそれを断った。でも芙美子さんはあきらめなかった。
祐治の返事が「今はそういう気持ちになれない」という断り方だったから。