おそるおそる問いただしてきたのは千鶴さんだった。
「つきあってるんじゃないの?」
「やー、どうなんだろう。わかんない」
「エリちゃんそいつになんて言ったんだ?」
松井さんが畳みかける。
「えーとねえ。少なくとも、つきあってくださいとは言ってない」
「まあ言わないわなあ」
松井さんがピーナツを口に放り込む。
「でも好きです、とは言った。そしたら、はい、って言われた」
「じゃあいいんじゃないの?」
千鶴さんが、お茶をすすりながら、それでいいと思うよと付け足してくれる。
「じゃあいいんじゃないか?」
松井さんもそう言ってくれた。
じゃあいいのかなあ。
いいことにしておくか。
「わざわざ確認するようなことでもないと思うけどな。
イヤじゃないからエリちゃんと一緒にいるんだろ」
松井さんがさらにそう言ってくれたので、やっぱりそれでいいことにする。
じゃあいいやそれで、とつぶやいたら携帯が鳴った。この音は祐治からのメールだ。
そういえば、アフター行くのを伝えてなかった。
「お、噂の彼じゃないのか」
松井さんが茶化す。
携帯を開いたら
「遅くなるのかな。先に寝てしまってたらごめんなさい。帰る時にメールいれてください」
と書かれていた。
携帯を閉じてバッグにしまったあたしに千鶴さんがにっこりして言う。
「そうやってメールしてくるってことは、つきあってるって思って構わないんだと思うわ」
千鶴さんのにっこりが嬉しかったので、あたしもにっこりした。
松井さんがあたしの頭に手を置いた。
「タクシー代出してやるから、早く帰ってやんな」
よかった。あたしやっぱり松井さんのことは嫌いじゃない。