美しいあの人

美しい人と一緒にお茶を飲む、その事実がとても嬉しかった。

松井さんから中途半端に作家の暮らしぶりを聞いたりしていたので、
祐治さんがいつ呼び出しても相手をしてくれることも別に疑問に思わなかった。

待ち合わせの店には祐治さんは必ずあたしよりも先に来ていて、
テーブルに小さめのノートパソコンを置いてなにか作業していた。
その姿が「仕事をしている」というように見えてなぜかわからないけど得意な気分だった。

すっかり舞い上がっていたのだ。

祐治さんがあたしと話すのを楽しんでくれていることが嬉しくて、
美しい人が一緒に過ごしてくれるのが嬉しくて。
その人の声が自分の耳に響くのが心地よくて。

祐治さんが時折きれいすぎるようなことを言うのも、
文章を書く仕事をしている人だから、うまいことをたくさん言えるのだろうと気に留めなかった。

この時間がずっと続くといいのにと思い始めていた。

自分が祐治さんを好きになっていることに気がついた。

祐治さんがあたしのことをどう思っているのかは、どうでもよかった。

ただ一方的に、この美しい人を手に入れたいと、そう思った。