美しいあの人

芙美子さんが、彼女ならば絶対に選ばないであろう服を着ている祐治の写真を見ながらつぶやく。
芙美子さんも悔しいのだろう。
あたしと一緒に西条祐治を作り上げるという点において彼女は協力をしてくれているが、
元々芙美子さんは祐治を愛しているのだ。
それが「自分にふさわしい見た目の男であるから」という理由であったとしても。

本来なら芙美子さんは祐治を独占したいはずなのだ。

結婚したからと言っても、祐治の心を芙美子さんが手中に収めたわけではなかったし、
彼女は妻という座を得て立場上は優位に立っていたけれど、
それでも祐治は週の半分はあたしの元にいたわけだし、
あたしが西条祐治の執筆担当であることには変わりないのだから、
芙美子さんも内心穏やかなはずではないのだ。