美しいあの人

芙美子さんが、あたしの顔をじっと見ていた。
何を聞かれるのか分からなくて見つめ返す。
芙美子さんが口を開いた。
「エリさんがここで会ったとき、祐治はなんて言ったの」
どうだっただろうか。
祐治と話した時を思い返してみる。
「知らない世界を知りたい、創作意欲をかき立てられる……だったかな。
なんかそんなようなことを言ってた。
あたしには、その時から小説を書いているって言ってたけどね。
千鶴さん、祐治その人にはなんて言ってたの?」
千鶴さんが小さく横に首を振る。
「どんな話してたかまでは。
ただ、祐治さんもその子に興味を持っているようには見えたわね。
エリちゃんの時がどんなだったか私ももう思い出せないんだけど……。待って」
千鶴さんはカウンターへと戻って行き、なにかを探し始めた。