美しいあの人

あたしは相変わらず祐治にわからないように原稿執筆にいそしみ、
彼のパソコンにデータを移し続ける日々を続けていた。

仕事に行っているフリをして、松井さんと打合せを重ね、
深夜営業のファミレスで執筆をして明け方に自宅に戻る。
自宅に戻ったら祐治のパソコンにデータをコピーして、昼前に起きて祐治との時間を楽しむ。

祐治がテレビやインタビューなどの仕事で出かけている時は、
自宅でひたすらキーボードを叩いていた。
松井さんからは、そろそろ執筆のために仕事場を借りてもいいのではないかと言われたが、
落ち着ける場所を作ってしまったら家に帰るのがおっくうになってしまうような気がして踏み切れなかった。