美しいあの人

あたしはそれまで誰にも言わなかった心情を千鶴さんに吐露した。
「いつまで続くかわからないけどね。
いつかあたしは書けなくなるだろうし、
そうしたら祐治にとっても松井さんにとっても利用価値がなくなる。
だから出来る間はなんとか頑張るしかないよ」
「それがわかっている人は長く続けられるわよ。
あたしは自分がずっと女優でいられると思ってたから続けられなかったんだわ」
カウンターの中の千鶴さんに向かって、無言でロックグラスを差し出す。
おかわり? 新しいのにする? と問われたので、おかわりをもらう。
八海山をロックで。
ここで初めて祐治と話していた時に、彼が飲んでいたものを。