美しいあの人

あたしが原稿を書いた後に、祐治のパソコンにデータを移しておくのだけは変わらない日課で、
原稿の進みが悪い日は、あたしも祐治もどちらもあまり機嫌が良くなかった。
二人で書店にでかけたら、新刊のコーナーにあたし達の本が平積みにされていた。
祐治の腕に自分の腕をからませる。
「ほんとに、売ってるんだね」
「ええ、エリのおかげですよ」
嬉しかった。
あたしは、祐治の妄想を現実にしてあげることができた。
しかもこの美しい人をあたしの文章で自分のもとへつなぎ止めておくことすら出来ている。