松井さんは、祐治に興味を持つのではないだろうか。
これまで祐治が出版社に小人さんメモを送っていたのは三月末だ。
今は八月。あきらかにこれまでとは時期が違う。松井さんは気にするはずだ。
どうしたらいい?
寝起きのうすらぼんやりした頭で色々と考えているうちに、祐治はでかけてしまった。
止めればよかったのだろうか。
けれど、なぜ止めるのかを聞かれても答えられなかったろう。
もうどうにでもなれと思った。

祐治がこれまでと違う物を書いてきたことに松井さんが興味を持ったとしても、
どのみちあれは小説ですらない。
書いてあるのはあたしと祐治の日常みたいなことだけれど、
それだってあたしは祐治とのことを松井さんに詳しく話したことはないのだから、
気がつかないかもしれない。
気がついて問いただされたとしたら正直に話すしか無いだろう。

話すことになったとして、松井さんがあたしのことをどう思うかわからない。
それでも構わないと思った。
あれを書き続けることで祐治があたしの側にいてくれたら、それでいいのだから。
あたしは出勤に備えて昼まで寝直すことにした。
同伴の予定が入らなければ、マンガ喫茶で書き物をしてから店に出よう。