派手なアロハシャツを着た祐治が、
新しいディオールのサングラスをかけて出かける準備をしていた。

あたしは祐治が寝入っている間にパソコンを触っていたのでまだ眠い。
ベッドの中から声をかける。
「でかけるの?」
祐治は輝かんばかりの笑顔で、あたしに大きめの封筒を見せる。
「ええ。ちょっと原稿を出しに行って来ます。
ついでに芙美子からも呼ばれているので、
私がちゃんと小説を書いているというのを話してこなければ」

あたしは飛び起きる。
祐治の手の中の封筒を見たら、そこには松井さんが働いている出版社の名前が書かれていた。
あたしが書いたあれを送るつもりなのか。
芙美子さんはおそらく相手にしないだろう。
それは構わない。
まさかあたしが祐治を喜ばせるためにものを書いているなどとは想像すらしないはずだ。
でも、松井さんはどう思う?
これまでずっと小説ならざる物を送り続けて来た祐治が、
突然、技量や面白さはともかく少なくともこれまでとはまったく違う物を、
そしてまったく違う時期に送ってきたとしたら。