僕と彼女と幽霊

キーンコーンカーンコーン



今日の授業の終わりを知らせるチャイムが鳴り響く中、彼女は僕をちらっと見て足早に教室を出ていく。僕も急いで教科書をしまい、彼女を追いかけるように教室を後にした。



彼女はスタスタと僕の前を歩き、僕はそれにくっついていく。端から見れば、なんとも頼りない光景だろう。



彼女がぴたりと歩くのを止めて、あるお店の中に入っていった。そのお店はお花屋さんだ。外には赤、黄、ピンクなど様々な花が色鮮やかに咲き誇っていた。だが、彼女はそれらの花には一切目もくれずカウンターへと向かった。



｢ミチヨさん、こんにちは。｣


｢いらっしゃいま…あら、お嬢様！お早い下校で。｣


この花屋は橘家がひいきに使っている花屋で、そこを切り盛りしている60代のおばあさんは彼女を見るなり顔がほころんでいた。



｢今朝電話で話したお花なんだけど、準備してもらえたかしら？｣



｢もちろんでございます。お嬢様のお母様、奥様のお好きな花をふんだんに使って作らせて頂きました。｣



そう言って奥から出してきた大きな花束は、外に飾ってあるどの花よりも綺麗で華やかにまとめられていた。




｢綺麗…。母もきっと喜ぶわ！｣




そう言って嬉しそうに花束を受け取った彼女は、ドキッとするような聡明でどこか大人びた顔つきをしていた。



お金は家で頼んでた分も合わせて後でまとめて払うわ、と金持ちらしいセリフを言うと花束を手にして花屋を後にした。





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