僕と彼女と幽霊

「悪い悪い!日課みたいなもんになっちまってよ。ミキちゃんおはよう!」



「ケンジさん、おはようございます。」



彼女は僕以外の人には礼儀正しくおしとやかなお嬢様風になる。いや、厳密にいえば本当にお嬢様なんだがね。



3人で教室に入るとみんなおはようと自然に挨拶が出る。基本的にうちのクラスはみんな仲が良いし、ほとんど小学校からの顔馴染みの奴らばかりだから彼女だけじゃなく、みんな幼なじみみたいなものだ。そんな中でも僕と彼女はいつも一緒にいるから、みんなにそんな関係じゃないと言っても冷やかされる。みんなもまさか僕みたいなパッとしない男が、この地域で最も権力と財力のある橘家の1人娘と付き合えるなんて本気で思わないから冗談が言えるのだ。



この日もいつもとなんら変わらない、勉強して、ご飯を食べ、昼休みにジュースをかけたトランプで勝負をし、1日が平穏無事に終わりにむかっていた。



ところが、今日はいつもとちょっと違うのだ。朝に彼女と約束をしていたから。


放課後に付き合って



普通の健全な男子ならば少なからず、淡いほのかな想いを張り巡らせるだろうが、僕にはその意味が決して楽しいものではない事を知っていたから、むしろ放課後がくるのが少しおっくうだった。


彼女も心なしか今日1日が終わりに近づくにつれ、少しずつ元気がなくなっていくようにも見えた。





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