僕と彼女と幽霊

僕の名前は雨宮幸太郎(あまみやこうたろう)。なぜコタローと呼ばれるようになったのかはわからないが、コタローのほうが呼び安いと思ったのかそっちのほうがしっくりきたのか、まぁそんな程度だろうと思い気にした事はない。なんなら、コタローが本名かと思うくらいみんなにそのあだ名が浸透している。


「母さん、今年は猛暑らしいんだよ。エアコンないときついよ。もうすでに暑いし。」


話しを聞いてるんだか聞いてないんだかわからないが、とりあえずうんうんと頷きながら洗い物をしていた。

梅雨が明けようとしている時からエアコンの話しをしていたから、母も若干うんざりだったのだろう。


「だから、そんなに欲しいなら自分の貯金で買ってちょうだい。お父さん今年ボーナスないらしくてお母さんだってきついんだから。」


なんで自分の金で買わなきゃないんだよ!親なら出してくれてもいいだろう!と、心の中では思ったがさすがにそれは幼稚な発言と思いぐっと堪える事にした。


ピンポーン



まるで催促するかのように2回目のインターホンが鳴る。はいはい、今出ますよ〜。


どう説得したらいいものかと考えながら、のそのそと玄関に向かい扉を開けた。

ガチャッ



「出るの遅い!8時には来るって昨日言ったでしょ!表に出て待ってなさいよ。」


扉を開けるやいなや怒涛のように話し始めたのは、お隣に住む同級生で幼なじみの橘未来(たちばなみき)。


「ごめんごめん。ちょっと母さんと話してて…」


「どうせエアコンの事でしょ。最近電化製品のチラシ見ながらその話しばっかりだもの。どれが安いとかこれならいけるかも、とか」


早くしてよね。と腕を組み合わせ構えて僕の準備を待つ彼女は、周りから言わせれば美人らしい。確かに背は僕より高くて手足が長くて肌も白い。黙っていれば良い女というのは、まさに彼女の事だとしみじみ思う。


「何よジロジロ見て。早く準備しなさいよ。学校に遅れるじゃない。」



この口さえなければなあ…と思いながらも怖くて言えないので、急いで準備する事にした。




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