「……知らん」


素直に言えず、曖昧な言葉が口をついて出てくる。


でも、これが輝の精一杯。


「なにそれ、そんなプレイどこで覚えてきたのさ」


秋津がニヤリと笑う。


満足げに、そして、ひどく安心した顔つきで。


「プレイてなんだプレイて!ったく、いつまで経っても駅に着かんだろが!!」


輝は歩調を速める。


秋津の顔をあまり見ないように。


自分の顔もまた満足げで火照っていることを知られないように。


「わわっ。輝ちゃん、僕の腕引きずられてる!痛い痛い!」


秋津の声なんてお構いなしに輝はズンズン進む。


後ろから見たら、きっと彼氏が彼女を引きずってるように見えるだろう。


輝が彼氏で秋津が彼女で…。


まぁ、それも悪くはないかと思うのは、完全に秋津にハマってしまってるんだろうか。


冬の刺すような冷たい夜風を頬に感じながら、輝は胸を張って駅へと向かった。