自分達のいる空間だけにイヤな空気が漂う。
「ケーキ屋はケンカするとこじゃねぇだろ?さぁ、食うぞ!」
輝はいただきます、と両手を合わせて合掌し、いちごのムースにかぶりつく。
「んま~。五臓六腑に染み渡るなぁ。ほら、奈留美も突っ立ってないで食えよ」
わざとらしく大声で絶賛してぶんぶん手招きをする。
「ふんっ。それもそうね」
まだ不服そうな奈留美だったが、渋々席に座ってフォークを手に取った。
奈留美がパクリとケーキを一口食べると、男性陣も席について食べ始めた。
輝の苦しい芝居により、なんとか場は収まったようだ。
「はい、輝ちゃん」
不意に秋津が自分のケーキの半分を差し出してきた。
「お前!コレは……」
差し出された皿の上には、先ほど惜しみながらお別れしたチョコケーキがちょこんと座っていた。

