「あたしの前で無理に笑うな。ムカつく」
もう一度、強く秋津の手を握りしめた。
「……うん。ありがと、輝ちゃん」
秋津が笑う。
これは本当に嬉しい時の笑いだ。
彼女1日目の輝だが、それはすぐに分かった。
というより、むしろ輝だったから分かったのだろうか?
「やっぱり、輝ちゃんが彼女で良かったぁ~」
秋津がニヘーっと笑う。
この笑いの意味も輝は知っている。
「エロいこと考えんな!」
スッと手を離し、秋津に背を向ける。
『次は~、高城~。次は~、高城』
タイミングよく降りる駅のアナウンスが流れる。
今日はいつもより時間が長くも短くも感じた。
すし詰め状態が緩和された車内から2人で降りる。

