「電車、もうすぐ来るみたい!輝ちゃん、早く行こ!」


上から電車の到着を告げるアナウンスが聞こえる。


なんの迷いもなく差し出された手。


なんの迷いもなくそれに重ねる自分の手。


なんとも大胆になったものだ…。


輝は苦笑しながら走り出した。


「早くしなきゃ乗り遅れるんだろ?走るぞーっ!」


苦笑したところを見られたくなくて、秋津を引っ張る。


「うん!」


2人で一気に階段を駆け上る。


『駆け込み乗車には~…』


まるっきり自分達のことを言っているのだろうが、気にせずギリギリで乗り込んだ。


「はぁはぁはぁ」


「はぁはぁはぁ」


くすっ


2人して空いている席に座り、顔を見合わせて笑い合う。


車両の中には2人以外だれもいなかった。


ちゅっ


軽く触れるか触れないかのキス。


その後は2人とも前を向き、会話を交わすことなく窓の外を眺めていた。