「そんなの、あたしが知るわけないでしょ。自分に聞きなさい」 他人が聞いていたらなんて冷たい奴だろうと怒るかもしれない。 でも、これでいいのだ。 他人がとやかく言うような問題ではない。 こういうことは、自分自身で気づかなきゃいけない。 奈留美には大抵分かっていた。 この涙の訳を。 しかし、過去の自分を知らず、かといって何か聞き出すことすらせずに丸腰で体当たりしてくるこのバカな友人を大切にしたいと思うが故に言えないのだ。 奈留美は輝が泣き止むまでずっと抱きしめていた。