「ナイスタイミングね。ちょうど今帰ろうとしてたのよ」
校門に到着すると、壁に背を預ける奈留美がいた。
「はい」
手には輝のカバンがぶら下がっている。
よく見たら、手は真っ赤だ。
「ありがと」
きっと待っててくれたんだって言ったら、生意気!なんて怒られんだろな…
「!ちょっと……どうしたのよ?」
本人の意志とは関係なく、その液体は輝の瞳からポロポロと流れ落ちていく。
「あれ?なんでだろ………止まれ。止まれったら!」
何度拭っても収まる気配など微塵もない。
「もぅ、あんたって子は……」
そんな輝をあやすように包み込む奈留美。
「ねぇ。なんで、こんな胸が苦しいんだろ…」
輝にしては注意しないと聞こえないような、か細く弱った声だった。

