「てめぇら、朝っぱらから人の機嫌害してんじゃねぇよ!」
完全な八つ当たりだが、人助けに繋がるからまぁ流していただこう。
「んだとコラ!」
何やらガンとばしてるらしいが痛くも痒くもない。
むしろこそばゆい。
「五月蝿い。とりあえず次で降りんぞ」
ひっ!とチンピラ高校生の喉が鳴る。
完璧輝の据わった目に射殺されている。
「もう大丈夫だかんな。怖かったろ?」
安心させるように微笑みかけると、男は顔を背けるように俯きながら
「ありがとうございます…」
とか細くつぶやく。
いつもなら
「この軟弱者がぁ!けしから―ん!!」
と一喝するのだが、今回はできなかった。
なんだコイツ、女じゃねぇか!
輝は女には甘いのだ。
「ケガ、早く治るといいな。じゃな」
次の駅に着いた途端、ありきたりなことを言いながら、チンピラ高校生の首根っこを掴み、輝はそそくさと去っていった。
――…

