――それは、何気ない通学途中
「遅れる!」
今日は大雨だから、てっきり警報で休みだと勘違いしてしまったのだ。
無遅刻無欠席が輝のモットーなので、当然遅刻するわけにはいかない。
「駅から走って5分。この電車乗り損ねたらおしまいだ!」
小学生以来の段数を飛ばしながら階段を駆け上り、滑り込むように電車に乗った。
「良かったぁ~」
テストで赤点免れた時より安心した。
一応、座れるかチェックをしたが、たまたま混んでいたので立ちっぱでいた。
「おい、お前。同じ高校じゃん。席譲れよ」
何やら近くで絡まれてる感じの声が聞こえる。
「え、でも、僕今足痛めてて…」
どうやら、絡まれてるのはケガ人男のようだ。
けしからん奴だな…
意識が向いたのは一瞬で、すぐに遅刻の方に切り替わる。
早く着け、早く着け、早く着け…
「あ゛?聞こえなかったのかよ、変、わ、れ」
チンピラ高校生のあ゛で理性が飛んだ。

