「遅くなってごめんね―。親がなかなか電話取ってくれなくてさ~」
ボコッ
「「あ」」
力任せに放ったしゃもじは、兄貴に当たることなく綺麗に秋津の頭へと吸い込まれていった。
「い゛っ!!!」
ガバッと頭を抱え、うずくまる秋津。
「いきなり何すんのさ―!」
涙目で睨んでくるもんだから、不謹慎にもきゅんとしてしまった。
「ごごごめんっ、悪気はなかったんだ!!」
「わ―、輝が彼氏に暴力振るいやがった。ちょっと母さん、今の見た?彼氏、カワイソウニ…」
兄貴のヤツ、何がカワイソウニだ。
笑ってるじゃんか!
言葉と表情が全然合ってねぇんだけど!!
「さっきの音は何?!」
やばっ、母ちゃん来ちまった。

