ほんとは後頭部に当てたかったんだよ。
悔しいけど、足の長さが……ね。
「あ―き―ら―、俺様に向かって回し蹴りしたの、後悔してももう遅いからな!!」
阿修羅様が降臨なさった!
「ヤベ、逃げろっ!!」
とっさに台所へと逃げ、カレーが入っていた鍋のふたを掴む。
「コラ輝!危ないでしょ?!」
「ごめん母ちゃん、非常事態なんだ。借りるぞ!」
近くに置いてあったしゃもじもひっつかんで、リビングへと出陣した。
「どうだ、兄貴!フル装備のあたしに勝てるかな?」
「ふん、馬鹿め!一体俺が何年お前を打ちのめしてきたと思ってんだよ」
リビングで待ち構えていた兄貴は、すでにファイティングポーズだった。
「兄貴、覚悟――っ!」
思いっきり高くしゃもじを振り上げた。