「兄貴が母さんにお前のこと話したら、ぜひ食べてってちょうだいってさ」
「ほんとに?!わぁ、嬉しい!」
「だから!親に連絡入れとけよ。あたしは下にいるから」
輝ちゃんは大声で一気にそこまで言うと、バタバタと下へ降りていった。
あんまりはっきりとは見えなかったけど、輝ちゃんの頬はほんのり赤くなっていた。
何に対する照れなのか、輝ちゃんはほんとに照れ屋さんだ。
「親に連絡……か」
ポケットに入れていた携帯にそっと触れてはみるけど、取り出しはしなかった。
今の僕の顔も心の中も、僕自身にはどうなっているか分からないけど、きっと輝ちゃんには見せられないな。
電気を消すと、部屋の中は一気に闇で支配された。
僕は逃げるように部屋をあとにした。