「ほぉら、山ザルは前しか見てないから…。すみません、大丈夫ですか?」
「いいえ、大丈夫です」
僕は怖くて下を向いたままだった。
また良くないことを考えてしまうから。
きっとこの胸に広がり出したモヤモヤは、前を見てしまうといっそう僕を締め付けると思うから。
「だから山ザルじゃねぇし!ほんとに大丈夫ですか?」
僕がうつむいたままなのを心配して女の子が心配気に僕の顔を覗きこもうとする。
だめ、見ないで。
今君に顔を見られちゃうと、我慢していた雫がこぼれ落ちてしまうから。
「本当に大丈夫ですから」
そう言って、僕は勢いよく走り出した。
後ろは振り向かずに、とにかく適当に走った。

