あげは「な、に…言ってんの?」
あたしがこの声を搾り出したのは紫苑の発言から何分後かは分からない。
もしかしたらほんの数秒かもしれない。
その間、頭がちゃんと働かなくて日本語さえも飛んでっちゃって…。
心臓が止まったように脳に酸素が送られて来なくなったみたいに、呼吸さえもしてない気がする。
やっと搾り出した声もカッスカスだったけど、でも、今は見た目なんて考えられなかった。
紫苑の見たこともないような切なげな表情がさっきの彼等と重なって心臓がきゅっと縮んだ。
それは、トキメキでもドキドキでもなく、感じたことのない複雑な感情が沸き上がって来るのみだった。

