みんな歳を取りました。
ヒロの小説は
何冊も出版され
あまりの人気に
私が40歳になるクリスマスに
自伝まで出すことになりました。

ヒロの自伝が届いた日、
その本は、私の将来のためにどうしても作りたかった
お気に入りのテラスで読もうと決めていました。

本と温かいコーヒーとチェックのひざ掛けを持って
テラスに出ると、

眼鏡をかけて 車椅子でテラスに座っている人が
私を待っていました。
そう、どれくらい待っていてくれたのでしょうか?

・・・19歳・・・・・・・・・・・。
ヒロはおっさんには感じなかった。
私は、運命の人だと思った。
「チェリー行くぞ!」
ヒロは私のことをそう呼ぶ。
こっぱずかしいが
ネットの中だけ
そっと【cherry】なんて使ってみる。

だって、私は
物静かで本が好きな、
眼鏡をかけている男性が好きだから。


・・・あれから20年。


彼は、そっと顔を挙げ本を閉じ、眼鏡をはずして・・・
優しい声で囁きました。

「チェリー待ってたよ。」


お・わ・り