「かおるの考えるおおきな木は、
こんな素敵な木なのです。
二番目の枝まではしごをかけて、
はしごを登ると、かおるの小屋があって、
台所やテーブルもあります。
ここでかおるはホットケーキを焼いて
食べたりするのです。
リスも来ます、
そしてその上には見晴台を作ります。・・・」

ばあちゃんは
毎晩
私が寝付くまで
この本を読んでくれた。
ばあちゃんの声が聞こえてくる。

本屋を開店した翌日は
通夜になり
その翌日、告別式をした。
私は、この本を棺に入れた。
毎晩私の枕もとで
ばあちゃんが読んでくれるように。

27歳にして
家族全員を失い、
28歳の誕生日を迎えるときは
ひとりぼっち。

急にヒロに会いたくなった。
女なんてゲンキンなものだ・・・。

49日が終わるまで
店はお休みにした。

なんてったって
ばあちゃんが
閻魔様に7回も審判されるのだから
店どころじゃない。
極楽浄土に行けるよう
私も拝まなきゃなんない。

急に心細くなった私は
迷惑メールに振り分けしていた
ヒロからのメールを
読む気になった。

[迷惑メールBOX]

to cherry
----チェリー
   そっちは涼しいか?!
   こっちはうだるような暑さだ!----
from ヒロ
...................
to cherry
----チェリー
   おめでとう!
   オレも頑張ってるぞ!----
from ヒロ
....................

たった一言の
メッセージが
毎日のように入っていた。
ひとりぼっちじゃない気がしてきた。
少し元気が出た。

ヒロに返事はせず
出版社に連絡だけ入れ
ノートパソコンを閉じた。

明日から私らしく前向きに
また、がんばろう!!