小さい町の小さい本屋さんはついに完成した。

------私の城。

掌(てのひら)にすっぽり入る
スマートホンとかいうやつでも
小説が読めるようになった世の中だが
やっぱり私は紙がいい。
ページが中盤に差し掛かるころには
残りの左のページがいとおしくなる。

子供の頃、店の童話を持ち出して
裏庭の小さな、錆びたブランコでよく読んだ。
父ちゃんには、
店の本は読んじゃだめだとよく怒られた。

私は「大きな木が欲しい」と言う本が大好きだった。
ついにはその本を自分ち本屋から
万引きした。

「さくらぁ~!本、いつ搬入するの!?手伝うよ~!」
大工のかわちゃんが
通りの向こうのトラックの中から
大声で叫んだ。
「サンキュ~~~!後であんたんちいくから~っ!!」
「おうっ!あとでな~!」
かわちゃんはいつも忙しく働いてる。
みっちゃんも【キッチンみなかわ】の
新メニューを考案したりと、
この町は、
みんな元気で
気持ちがいい!

同窓会名簿が半分ほど出来上がったので
みっちゃんちに持って行って
他の子らとも
消息の分からん奴らの
調査をするのだ。

帰ってきてよかった。
この町はやっぱり
最高だ!!

私はわざと入口に
門をつけた。
この入口から一歩入ったら
別世界と思って欲しいから。

ウッドのテラスを囲むように
もみの木を植えてもらった
テラスで本を読んでも
通りの人から見えないように。

木造りの建物は
窓枠も、もちろん木枠にしてもらった
メンテナンスが大変らしいが

私にはかわちゃんがいるからね。
大丈夫、大丈夫。