夢渡り

「…知ってます」
やはり、そうであった。
彼は覚えている、真実を。
しかし、私は覚えていない、何も、思い出せない。
なぜだ、なぜ、私は覚えていない、
「まぁ、落ち着いて、少しずつ思い出しましょう」
まるで私の心を読んだかのような発言をする彼。
「そうそう、あなたは能力を持っていますよね?名前は、確か、“ユメワタリ”…」

ガタッ!!

私が椅子から立ち上がる音がやけに大きく響いた。