「シオン!シオン!」

ゆさゆさ、ゆさゆさ。




「…あー……ルナリア?」


むっくりと起き上がったら袖がよだれで冷たかった。


「もう、だらしないねぇ。寝てて仕事になるの?
レパードさんに言い付けるよ!」

カウンター前には幼なじみのルナリアが仁王立ちで立ってた。


肩までの茶髪に小さい背丈。
こんなおっかない声出しても、歌う時は鳥のように、たっかい声出すんだよな…


「ルナリア、餅だよ。ほら、あの雲!餅みたいじゃない?」

よだれをタオルで拭きながら、カウンター横の開いた窓を指差した。



「あんたってほんとバカね。今、雨降ってんのよぉ?」


あ…ほんとだ。

僕が居眠りしてた間にさきほどまでの空はどこへ消えたのか、
小雨が降っていた。