んで、
帰ろうとしたら
石黒さんが校門にいて…

正直迷った。

話しかけようか
話しかけまいか。


アタシが迷ってるうちに、美沙が石黒さんに話しかけた。


「せんせー」

「ん?どうしたあ?」


片方の眉毛を上げて
“ん?”って聞くしぐさ可愛い。


「ウチが泣いとったの知ってる?」

「あー…知ってる。何があったの?」

「んー。何か全てに失望した的な?」


そう言って
美沙は笑いながら話す。


「鈴松さんは?大丈夫?」

「うん…何かごめんね先生」

「いや、謝ることじゃないよ」

「いや…でも」

「大丈夫だから。ね」

「れーちゃん。大丈夫だよ」

「うん…」

「そうだ先生!!」

「ん?」


美沙が間を空けて
こう言い放った。


「ぎゅってしてあげてよ」


え、

ちょ、待って?
この子何いってんの?


「え、駄目やろ。俺がぎゅってされてまうて」


笑いながら、
手錠をされた仕草をする先生。


「ほら。俺まだ人生長いし。な?」


ふざけて言う先生。



でもね、先生。



本当はして欲しかった。




“誰にも言わないから”



して欲しかった。



ねぇ。
先生。



誰にも言わないから。




ぎゅう…

してよ。