適度に混んだ電車の車内。 ドアに寄りかかるあたしの前、蒼空くんは吊り輪につかまり、体を前後にぶらぶらと揺らして遊んでいる。 肩にかばんをかけるあたしと違って、蒼空くんはリュックを背負っている。 だからその姿は、ちっちゃい男の子とかぶって、あたしは口元に片手をあてて、クスッと笑った。 「……んだよ、莉子」 蒼空くんが唇を尖らせる。 「べっつに」 あたしも真似して、唇を尖らせると……。